PORTFOLIO

MOON

MOON vol.2 / たなびく / #FF9F8E

2020.9.1

− たなびく −

Contents

◆ late summer /KAWAGUCHI Yuko
◆ 「たなびく」/HIRAI Yuta
◆ さまざまな発明/MIYAKITA Hiromi


late summer


丹後の夏は、夕日がとても美しい。
夕日ヶ浦海岸という、人気のスポットもある。
水平線と並んで、
どこまでもどこまでもたなびく雲が、
静かな海に彩りを添える。


たなびくものは、形を変える。
山にかかる霞、どこからか湧き上がる煙、
仕事帰りに見上げる夜空の雲……
ローカルな風景をつくるたくさんの粒子が、
私のまわりをたなびいている。


サプライズ花火を見た。
ひとつひとつに願いを込めるように、
ゆっくり丁寧に打ち上げられていく。
カラフルな輝きと心臓まで響く音が、脳で交わる。
澄み切った空気に、
たなびく煙は一瞬で消えた。


たなびくものは、形を変える。
きっと、この困難も。

9月になり、丹後も秋めいていく。
弓張月にかかる雲が、一層美しくなるだろう。
冷たくなる風を感じながら、
たなびく日々を、凜々と生きていく。


KAWAGUCHI Yuko
profile, portfolio


「たなびく」


あの時、ああ言えばよかったな。
あの時、もっとこうすればよかったな。

後悔がたなびいたまま、現在。

おう、いつかまた、きっとな。
絶対な。

約束がたなびいたまま、現在。

何になりたいと、思っていたんだっけな。
どんなふうに生きたいと、思っていたんだっけな。

夢がたなびいたまま、現在。

今日も疲れたな。
一杯やって、寝るかな。
明日もまた、頑張らないとな。

昨日がたなびいたまま、現在。


小さな変化がいくつも重なって、
たなびいたままの今日に生き残っている。

今日もまだあと少し残っている。


HIRAI Yuta(CRAB WORKS)
https://crabworks.jp


さまざまな発明


夏の空をはまるで芸術の歴史を見るかのよう。一つの時代が始まっては消えてゆき、次の時代が始まりを迎えます。海が見せてくれる夏のドラマ。茜雲たなびく。東雲たなびく。

それでは、前回に引き続き、アメリカのダンスの歴史を振り返ります。60年代のポスト・モダン・ダンスの頃まで、振付家は動きの開発に情熱を捧げました。20世紀前半のアメリカではブロードウェイなどのショーダンスが全盛期でした。ルース・セント・デニスとテッド・ショーンがオリエンタルな踊りなどを融合したダンスを教える学校やカンパニーを設立し、そこからマーサ・グラハムとドリス・ハンフリーというモダンダンスの2大巨頭が出て来たのです。マーサ・グラハムはcontraction(収縮) & release(弛緩)というテクニックを創始しました。吐く息と共に脊髄を丸めるように収縮させ、吸う息でそれをほどき背骨が自然に戻る、というような動き方で、これまでのバレエに見られたような真っ直ぐに立ち、高く舞うというダンスとは異なるものでした。そのような動き方の発明をし、人間の内に秘めた情熱などを表現することを始め、モダンダンスとして開拓されました。

時代は変遷してゆきます。ポストモダンダンスの黎明期を作ったマース・カニングハムは元々グラハムカンパニーのダンサーでしたが、グラハムの振付けた感情的で演劇的なダンスに反発してゆきます。彼は音楽の分野に多大な影響をもたらした、ジョン・ケージに1937年に出会い、ダンスは身体の動きそのものであると提唱し、音楽からも独立したダンス作品を産み出してゆきました。ニューヨークのポスト・モダン・ダンスで最も重要なのは、Judson Dance Theater(ジャドソン・ダンス・シアター)です。ニューヨークの教会で実験やリハーサルや公演が連日行なわれていました。そこでは、イヴォン・レイナー、スチーブ・パクストン、トリシャ・ブラウンなどを輩出しました。スチーブ・パクストンが始めたコンタクト・インプロビゼーションは2人以上のダンサーがお互いの体重を使って即興でダンスする方法です。集団で自由に即興するので、誰が「センターを穫るか」なんてことはしないのです。ポストモダンダンスとは、ダンサー達が動きとは何なのか、ダンスとは何なのか、重力をどう解決するか、舞台上のヒエラルキーをどうやったら取り払えるか、など様々なことを自問し、実験と実践を繰り返す時代でした。その後、ダンス表現の中心地はヨーロッパへと移り現代へと続きます。

2回に渡り、アメリカのダンスの歴史を紐解きました。現代に近づけば近づくほど、分からなくなって、ついに自分が今やっていることを知ってもらうほかありません・・ これまで残してきたメモを再び見返して、次は何が出てくるか楽しみです。


MIYAKITA Hiromi
https://miyakitahiromi.com/


編集後記

「夏が過ぎていく」

なんとも名残惜しい表現です。職場を出る頃には、もうすっかり外は暗い。。。毎日、日が短くなっていくのを実感します。酷暑といわれた今夏。秋が来ても、この暑さはまだ終わりそうにありません。

夏になっても、世の中の状況は変わりません。野外イベントも、お祭りも、お盆の集まりさえもない。どこかに出かける気持ちにもなれず、季節感がないまま、身も心も、秋にスライドです。仕事に恵まれ、制作を楽しみ、毎日充実しているはずなのに、解放感が足りないのです。

季節はめぐります。
名残惜しい夏をおいて、前に進まなくては。


2020.9.1 KAWAGUCHI Yuko


『MOON』とは…
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